肝細胞がんは日本及び世界で、癌による死亡の原因疾患の第3位となっている、 非常に頻度の高い悪性腫瘍である。治療としては外科的切除、PEIT(アルコール注入)、 及びラジオ波焼却療法(RFA)、肝移植等が根治を目指すものとして挙げられる。 しかしながら診断時点ですでに進行しており、これら根治的な治療の適応とならないことが多く、 たとえこれら治療を行っても再発する症例が非常に多い。 進行例に対しては動脈塞栓術、全身化学療法、 またごく最近、分子標的薬であるキナーゼインヒビターが使用されているが、 治癒ではなくあくまで延命を目指すものとなっている。
【補遺】しかしながら、上述の外科的切除、PEIT(アルコール注入)、及びラジオ波焼却療法(RFA)、 肝移植等が行なえない進行肝細胞がんでは、発症後平均12ヶ月以下の延命と言われている (J Surg Oncol 80:143-148, 2002; Abeloff's Clinical Oncology, Churchill-Livingstone 4th edition, chapter 84, 2008)。
これら外科的治療、抗がん剤治療とは別のカテゴリーとして 植物や微生物由来の成分を利用した自然療法が存在する。 しかしながら自然療法の癌に対する効果を詳細に検討した報告は 現在までほとんど存在しない。
過去20年にわたり我々は自然の成分由来の生薬を開発し、 癌を含む様々な疾患の治療に応用してきた。その過程で癌のうち、 特に肝細胞がんに我々の生薬の効果がみられることに気がついたので、 その結果をまとめて報告する。