前述のように患者の約3/4は過去にTACE、PEIT、RFA、化学療法といった 肝細胞がんの治療を行っており、また38%の患者は当院の生薬治療中にもこれらの 治療の併用を行っている。生薬治療開始後の生存期間は、既存治療を行った群、 なにも治療を行っていない群を比較すると、やや既存治療を行った群で生存期間が長い傾向は認められるものの、 有意差は認められない。
現在までに報告されているTACE、PEIT、RFA、化学療法といった肝細胞がんの 既存治療の成績と比較するために、BCLC分類にわけて生存期間を検討した。 生薬治療開始後の生存期間、診断後の生存期間いずれもBCLC分類の進行度と相関している。 さらに当院治療患者群の生存期間は現在までに報告されている肝細胞がん既存治療成績と比肩しうるものとなっている。 図11に示した3つの報告は、近年のものである、大規模な成績である、アジア人種を含む、といった観点から選び出したものである。 BCLC分類毎に従って示した生存期間をさらに生薬数、冬虫夏草の有無に分けて検討した。 早期肝細胞がんであっても進行肝細胞がんであっても、4種類以上の生薬群、 及び冬虫夏草を含む群がより良好な生存期間を示している。 患者数は少ないが、BCLC分類C-Dの進行肝細胞がん症例において、当院で4種類以上の生薬群、 及び冬虫夏草を含む治療を受けた患者群の生存期間中央値は30ヶ月~75ヶ月と、 現在までに報告されている西洋医学による治療成績に比べ2-10倍長い生存期間を達成している。
【今回の研究】
BCLCステージ | 0 | A | B | C | D |
---|---|---|---|---|---|
A.肝細胞がんと診断を受けてからの生存期間 | 53.5 | 43.1 | 21.0 | 15.9 | 15.4 |
B.生薬治療開始からの生存期間 | 42.7 | 24.7 | 11.7 | 8.2 | 3.6 |
【代表的な文献】
BCLCステージ | 0 | A | B | C | D |
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Wang et al (2008) | 58 | 37 | 14 | 3 | <2 |
Toyoda et al (2005) | 58 | 24 | 8 | 6 | |
Camma et al (2008) | 23 | 15 | 9 | 4 |
BCLC分類ごとに分けて検討した全101人の生存曲線
A, 肝細胞がんと診断を受けてからの生存期間
B, 生薬治療開始からの生存期間
For stages 0, A, B, C, D, n = 25, 33, 18, 12, 13, respectively
図: 診断から、及び生薬治療開始からのBCLC分類ごとの生存期間中央値(月)、近年報告された治療成績との比較 (統計はKaplan-Meier法による)