現在、癌学会(日本癌学会、国際癌学会、国際癌学会の医学雑誌)に 報告されている資料等から、抗癌剤を使った場合の、それぞれの 癌に対する治療効果、縮小効果、延命効果が大体判っています。
今、これを表にしてお示しします。
抗癌剤で治る癌と治らない癌
(1)抗癌剤あるいは放射線療法で治癒、
長期延命の癌(主に血液の癌)
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・小児の急性リンパ性白血病(ALL) ・小児の急性骨髄性白血病(AML) ・小児の固形癌(肉腫) ・初期の悪性リンパ腫 ・慢性骨髄性白血病(CML) ・慢性リンパ性白血病(CLL) ・絨毛腫瘍 ・精嚢癌 ・肺癌(限局性の小細胞癌) ・食道癌(限局性のもの) ・喉頭癌(限局性のもの) ・咽頭癌(限局性のもの) |
(2)手術だけで治癒する癌 |
・甲状腺癌
・乳癌
・胃癌(リンパ節転移のないもの) ・直腸癌 ・子宮癌 ・精嚢癌 ・前立腺癌※ ・肺癌(リンパ節転移のない非小細胞癌) |
(3)(死亡はするが)抗癌剤である程度
延命効果がある癌
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・乳癌(6~12ヶ月) ・卵巣癌(1~4年) ・胃癌(10ヶ月) ・大腸癌の術後再発(4.5ヶ月) |
(4)抗癌剤をしても短期間しか延命しない癌
(延命効果のない癌)
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・喉頭癌(限局性でないもの) ・咽頭癌(限局性でないもの) ・食道癌(限局性でないもの) ・甲状腺癌(再発・転移したもの) ・十二指腸癌 ・盲腸癌 ・肝臓癌 ・腎臓癌 ・副腎癌 ・子宮癌(再発・転移したもの) ・肺癌(限局性の小細胞癌を除く) ・成人T細胞白血病 |
(5)どんな抗癌剤治療でも早期に死に到る癌 | ・膵臓癌 ・胆のう癌 ・胆管癌 ・胸膜中皮腫 ・悪性線維性組織球腫(MFH) ・成人の肉腫(消化管以外) |
※ 手術せずホルモン剤で治療する場合が多い
抗癌剤等を使ってうまく生き延びれる癌から順に一応5段階に分かれておりまして、 表の(1)は、最近抗癌剤で先ず延命出来る人が多い癌で、主に血液の癌、リンパ性の 癌と一部特殊な固形癌です。このグループは抗癌剤を早期に使い、転移が 殆ど見られない場合は、抗癌剤で10人中6~7人は10年~20年延命します。
但し、そのうち、かなりの子供さんは繰り返す抗癌剤でlate effect(後期障害)と 云って、延命はするが、抗癌剤の副作用がずっと残るのです。それらに苦しみながらも生き延びる人がかなりいるのです。
(2)の癌は、精嚢癌、乳癌、子宮癌、直腸癌、前立腺癌に甲状腺癌や 手術可能でリンパ節転移もない胃癌、肺癌(非小細胞)などで、早期に切除すれば 60~70%の患者は生き延びます。しかし、それ以外の(4)、(5)の癌は、体内の血液の流れの 真っ只中にあり、早く手術をしても血液やリンパ流の流れに乗って、体のどこかに 転移し、早晩、進行癌、末期癌に進展します。
癌に効くクスリは無数にありますが、多くの場合、抗癌剤で癌は縮小しても、 癌よりずっと弱い正常な人間が先に苦しめられて死んでしまうのです。