抗癌剤を使うと、癌は確かに弱って小さくなり、レントゲン、CTで癌は小さくなり、 マーカーも低下し、確かに抗癌剤で、癌の縮小効果は得られます。
しかし、患者は苦しみだし、「先生、もう抗癌剤だけは止めて下さい。」
医師は、哀願する患者さんに、レントゲン、CT、また血液のマーカーのデータを見せて、 「あなた、何を言っているんですか。抗癌剤のおかげでこれだけ癌が小さくなっているでしょう。 これだけマーカーが下がっているでしょう。」と言います。
確かに抗癌剤で、マーカーも低下し、CT、レントゲン上でも、癌が縮小しています。 それを見て、患者は、「ありがとうございます。ゲー」「ありがとうございます。ゲー」と 言いながら、辛抱します。一方、人間の正常な細胞は きつい抗癌剤のため、髪の毛は抜けるは、食事は食べられなくなるは、嘔吐はするはで、 抗癌剤の強い副作用で苦しみます。これ以上抗癌剤を続けると人間が死んでしまうので 途中で止めます。
止めて4ヶ月もすると癌はまた勢いを盛り返してきて、レントゲンやCTを 撮ると、腫瘍が2~3倍になり、マーカーも3~4倍に上昇し、また抗癌剤を開始します。 いくら新しいきつい抗癌剤をやっても、癌は癌で、一定の所で全滅せずに残存してふんばります。 一方、人間の正常な細胞の方は、またきつい抗癌剤をかぶせられ、脱毛、嘔吐で苦しみます。
抗癌剤で癌がゼロになる前に、人間の方がとっくの昔に、先にゼロになってしまう訳です。 こういう事を繰り返しているうちに、結局癌よりも先に人間が苦しんで亡くなっていくのです。
以上詳しく抗癌剤の空しさを説明して来ましたが、よく考えてみると、当然といえる自然の理であります。
例えば、概略の平均値ですが、乳癌が手術をして再発して、肺、或いは肝臓へ転移しますと、 抗癌剤を使わない場合と使った場合を比べると、半年か1年は延命します。 また卵巣癌は手術をして再発した場合、抗癌剤を使わない場合と比べて1~3、4年延命します。 胃癌も最近、TS-1を使うと、使わない場合と比べて、10ヶ月~1年は延命します。 また、大腸癌は、期間は短いですが、抗癌剤を使わない場合と比べて、6ヶ月弱延命します。
ここで気をつけておかなければならないのは、論文で取り上げられている患者群と、一般の 患者さん達との差です。
抗癌剤の治療実験で取り上げられているのは、比較的若くて、病状もほとんどないという、 抗癌剤治療に最後まで耐えられる選ばれた人達なのです。そうした人達と、実際の 治療の対象とされる人達とは、現実として、かなりのずれがあります。
抗癌剤を勧められて悩んでいるとして当院を受診される方の多くは、高齢であったり、 また、症状も強く出ていたりする人達です。こうした別の質をもった集団に、表面上の数字を 機械的に当てはめるのには大きな疑問を持ちます。
それらをふまえた上で、私がもしこれらの癌に罹ったとしますと、10年延命して生きるのならば 苦しんでも抗癌剤をやりますが、1年か2年ほど延命して、その間、抗癌剤の副作用で 美味しい物もろくろく食べられず、苦しみながら死んでしまうのなら、私は抗癌剤を使わず、 美味しい物を食べてニコニコして1年か2年で死んで行きます。
申し上げて来た事が、抗癌剤を使ってどれだけ癌が小さくなり、且つどれだけ人間が延命するかと云う、切実な 問題に対する答えを客観的にお示ししました。科学的に抗癌剤と癌、正常細胞との相関関係を考えてみた訳です。
私は昔から、今みたいな効果のある天然の制癌剤の開発に成功していない時代から以上の事が判って おりましたので、表の(1)、(2)以外の癌患者さんには、「どうせ死ぬならば苦しんで死になさんな。」と 常に指導して来た訳です。
以上、ご説明して来た抗癌剤の癌に対する効果は、どこの 大学病院へ行こうと癌センターへ行こうと、人間が超えられない自然の摂理のハードルなのです。