私はアトピーの主因を「活性酸素」にあると長年主張してきました。 私たちの身体は、細菌やヴィールスなどの異物が身体の中に侵入すると 食細胞が動員されて、これらの異物を食べてしまう仕組みになっていますが、 異物が次から次へと侵入してくると食細胞は大忙しになります。
食細胞は、順次、異物を追いかけては食べるという動作を繰り返すのです。 このとき、いったん満腹になった食細胞が再び食欲旺盛になるためには、 先に食べた異物を溶かしてしまわなくてはなりません。
この役割を受け持つのが活性酸素です。したがって、活性酸素自体は 人間にとって不可欠な存在なのです。活性酸素が生成されないと、CGD という恐ろしい病気の原因にもなります。
しかし、実は、問題はこれから先にあります。活性酸素がどこまでも善玉ならば、 その研究も専門家だけに任せておけばよかったのですが、活性酸素には ジキルとハイドのような二面性があり、しかも、活性酸素が悪玉の 役割をも果たすように仕向けた犯人は、他ならぬ文明社会 そのものであることが最近の研究で明らかになったのです。
活性酸素が体内で増加し過ぎると、勢い余って自分の身体の組織をも 攻撃するのですが、近年、活性酸素の過剰をもたらした正体は、薄くなったオゾン層を 突き破る紫外線であり、無神経に乱用される放射能であり、病院で提供される医薬品などであります。
また最近増加し続けている自動車による排気ガスは、製鉄工場でたかれる 重油から発生するガスとともに大量の窒素酸化物を含み、 この窒素酸化物も体内で大量の活性酸素を発生させます。
その他、塩素化合物、トリハロメタン、PCB、メチル水銀、マンガン化合物、 カドミウム化合物などの工場廃液や、フェニルヒドラジド、 クロラムフェニコールなどの医薬品も細胞の内外で有害な活性酸素を生み出します。
この活性酸素の過剰が原因で起こる病気はアトピーをはじめ癌や生活習慣病など、 私たちの病気の80~90パーセントに及んでいるとさえいわれています。
活性酸素 + 脂質 = 過酸化脂質
これはとても重要な公式です。というのも″悪玉″活性酸素は 非常に強力な代物ですが、作用時間が短く、作用部位も細胞の 表面に限られています。これに対して、過酸化脂質は、強さは それほどではありませんが、作用時間が長く、細胞の内部に 浸透する性質をもっているからです。
したがって、生体に実際に害を及ぼすのは、活性酸素そのものというよりは 過酸化脂質のほうであろうと考えられるのです。
「活性酸素」と「脂質」の組合せは、最悪のコンビといえます。
ここでいう「脂質」とは、一般に油・脂肪などや、身体の中の コレステロール、中性脂肪、食品、化粧品の中に含まれている いわゆる″あぶら″類を指し、この悪玉過酸化脂質の原料となる 脂質は、正確には、二重三重の結合をもった不飽和脂肪酸ということになります。
さて、宇宙船地球号とも呼ばれる私たちの惑星=地球は、生命体の存在に とって実に都合よく作られています。もしも現在、銀河系の外の宇宙から 地球を観察しにやってくる知的生命体がいるとしたら、彼らの旅はきっと 驚きの連続になることでしょう。
とりわけ、その宇宙人の御一行様が驚嘆の声を上げるに違いない 事実の一つに紫外線とオゾン層の関係があります。
紫外線には殺菌能力があり、皆さんが冬の衣類やフトンを夏場、日光に さらして乾かすように、日光の紫外線が、カビや黴菌(ばいきん)の繁殖を 抑えている事実はよく知られていますが、これは紫外線で照射された 物体の表面でシングレット・オキシジェンという活性酸素が 発生して、この活性酸素が殺菌作用を果たすという過程を経ているのです。
このように活性酸素は、いわばジキルとハイドであり、「過ぎたるは及ばざるがごとし」と いう類のものなのです。それでは、活性酸素の過剰発生を 防ぐにはどうすればよいのでしょうか。
答えは、地球に到達する紫外線の量を適度に保つことです。 そして、神様がその手段として用意したのがオゾン層です。 オゾン層の重要な役割は、地球上殺菌に必要な紫外線を通過させ、 それ以上の紫外線を反射してしまうことです。
フロンガスによるオゾン層の破壊は、マスコミでも大きな 社会問題として取り上げられるようになってきましたが、このままオゾン層の 破壊が続けば地球上には紫外線照射量が異常に増えることで、活性酸素が 増産され、汚染度の悪化とともにアトピー性皮膚炎が増加、重症化する ことは間違いありません。
また、工場や自動車から排出される窒素化合物ももちろん活性酸素を大量に 発生させ、これも同じく露出部を中心とした重症アトピーを 生みだす大きな原因となっています。